元民社党委員長 塚本 三郎
今日の日本にとって、最大の問題は、安全保障に対する認識の欠如である。
第一の原因は、憲法の第九条である。敗戦後、占領軍は、日本国民が再び強力な国家とし再起することを恐れ、強固な独立国家とならないよう、歴史上、類例の無い不戦の憲法を押し付け、独立後も続けて保持することを強要した。
当時の日本国政府と国民は、多少の異論はあったが、占領軍の強要を逆手にとり、防衛を米軍に任せ、日本国家は、ひたすら戦後の復興と経済建設に努め、史上稀にみる経済大国を建設した。だがその結果が、日本政府も、国民も予知しなかった、自主独立の国家観を喪失した。
第二の原因は、占領軍の実施した「東京裁判と呼ぶ復讐劇」によって、日本国家こそ、戦争挑発者であり、侵略国家であったとの、誤った歴史認識によって日本を断罪した。特に日本軍部は、日本政府と国民を犠牲にした犯罪者と断罪した。日本に軍隊さえ無ければ戦争は起きないと言う、歴史認識を一方的に強要した。
第三は、東京裁判と共に日本国内の体制一新の為、公職者追放により、戦時中の指導者を一掃することで、新しい日本社会を造らせた。自由、平等、平和の言葉によって、戦争に協力しなかった人達を新しい指導者として、戦後体制を造り替えた。
占領下として、米軍の支配体制を「独立後も維持」する為の、国民の歴史認識と指導体制を引き続き持続せしめ、それが今日に至るも潜在的思想となっている。
安全保障と防衛力の必要性は、周囲の実状と比例する。
戦後の荒廃した日本国家には、奪うに値するもののない、廃墟に泥棒は侵入しない。
だが宝の山には、頑強な塀を必要とする。強奪して失うものよりも、得ることの方が大となれば、食指を動かす相手が生まれる。侵略者の敵意を抑えるのに役立つのは、強固な防衛力、抑止力である。
近年、日本の周辺は、緊張を増す軍事情勢である。日本が非武装国家であることも、その緊張を高める一つと思う。
ロシアも、朝鮮半島も、特に中国の、常識を逸した軍事力増強も、アジアの緊張を増大せしめている。心配なことは、これ等の国々が、独裁政権であること、その為に、国内の不平、不満の高まりが、危険水域に到りつつある。
それに対し、国内体制は鳩山総理と小沢幹事長の代表辞任で、民主党の表紙が変り、菅直人氏に交代して、国民世論も大いに見直したようだ。
表紙が変わっても中身が変わらなければ信頼できない。
菅政権は前任者二人の「政治とカネ」の問題を解消するため、「清潔を売り」にした。しかし、バラマキのマニフェストと共に、国家の解体を目論む危険な政策をあきらめ、防衛力を軽視して来た、民主党の理論と政策を、見直すことが決定的に大切である。
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